導入実績と活用事例

110番非常通報装置は金融機関を中心に導入が進められ、現在ではほとんどの金融機関で設置・活用されています。金融機関以外(幼稚園・保育所・学校、障害者支援施設・高齢者施設、病院、高速道路料金所、鉄道駅、バス会社、市区役所等の官公署、電気・ガス・水道等のライフライン施設、博物館・美術館、ホテル等)への導入も増えています。

特に平成28年(2016年)7月に発生した神奈川県相模原市の障害者支援施設における殺人等事件を契機に、防犯対策の重要性とその手段としての110番非常通報装置の有効性が改めて認識されるようになりました。これを機に、当協会では障害者支援施設のみならず、高齢者施設、女性・少年保護施設及び保育所・学校等の社会的弱者関連施設における110番非常通報装置の普及を積極的に推進しており、事件以降、これら施設の新規の設置数は2,000台を超えています。

令和3年12月末現在、当協会が支援している施設の110番非常通報装置の設置台数は約34,200台です。うち、金融機関以外の施設の設置数は約6,250台で、全体の約18.3%になります。

活用事例

事業所(施設)の110番非常通報装置が効果的に活用され、被害の拡大を防ぎ、犯人も早期に検挙された事例等を紹介します。

(金融機関)

事例1

 令和3年1月15日(金)午後1時45分ころ、大阪府下のK銀行I支店に犯人(72歳・無職の男)が客を装って侵入、女性行員に対し「俺は強盗だ。この袋に金を入れろ」などと記載されたメモを渡してロビーのソファーに腰かけた。女性行員が上司に報告すると、上司が110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が犯人を店内で現行犯逮捕した。

事例2

 令和3年4月8日(木)午後2時36分ころ、神奈川県下のY郵便局に犯人(40歳・無職の女)が客を装って侵入、カウンター越しに窓口の女性局員にカッターナイフを突きつけて「お金を下さい」と脅した。局員はすぐに局長に知らせ、局長が110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が犯人を局内で現行犯逮捕した。

事例3

 令和3年9月24日(金)午後0時55分ころ、兵庫県下のT信用金庫T支店に犯人(69歳・無職の男)が客を装って侵入、カウンター内に押し入り、男性職員に千枚通しを突きつけて「金を出してくれ」と脅した。別の職員が直ちに110番通報ボタンを押下するとともに店長が相談コーナーで話を聞くと伝えたところ、犯人は千枚通しをズボンのポケットにしまった。非常通報で警察官が急行し、相談コーナーに座っていた犯人を現行犯逮捕した。

日防災では、金融機関において、強盗事件以外でも身の危険を感じた場合には110番非常通報装置を活用するよう助言しています。日防災が支援している金融機関では、令和3年には、応対した店舗職員の顔を殴打するとともに別の職員の腹部を蹴るなどの暴行を加え現行犯逮捕された事件をはじめ25件の事案で110番非常通報装置が活用されました。

(金融機関以外)

事例1

 令和3年1月23日(土)午後11時22分ころ、東京都下のJR東日本M駅において、犯人(40歳代・外国人の男)が当駅停まりの電車内に座っていたところ、車内点検中の駅員から降車を促されたことに激高し、降車後ホーム上で騒ぎ、駅員の帽子を飛ばした。連絡通報を受けた改札事務室の駅員が110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が犯人を暴行罪で現行犯逮捕した。

事例2

 令和3年5月6日(木)午後7時17分ころ、東京都下のE病院において、病院職員が外来受付で執務中、廊下のベンチで包丁を持った犯人(60歳代の男)を目撃したことから、危険を感じた同職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し調査した結果、犯人は同病院の救急外来での処置に不満を抱いて暴言を吐いた後、一度帰宅して包丁を持ち再来したことが判明したことから、警察官が犯人を銃刀法違反で現行犯逮捕した。

事例3

 令和3年9月26日(日)午前4時12分ころ、福岡県下の障がい児入所施設において、行為者(53歳・無職の男)が当該施設の玄関ドアをブロック片で割り侵入、物音に気づいた警備員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し、付近を徘徊した行為者を発見、警察署に同行した上で保護した。

事例4

 令和3年11月4日(木)午後2時14分ころ、千葉県下の市役所生活支援課において、犯人(40歳代・職業不詳の男)が受付で来所者(被害者)と職員が口論していたことに腹を立て、被害者に罵声を浴びせたことから犯人と被害者の口論に発展、激高した犯人が被害者に殴るなどの暴行を加えたことから、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し犯人を傷害罪で現行犯逮捕した。

協会が支援している金融機関以外の施設等においては、これらの事例を含め、身の危険を感じた191件の事案(うち、現行犯逮捕した事件が12件)で110番非常通報装置が活用されています。

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