導入実績と活用事例

110番非常通報装置は金融機関を中心に導入が進められ、現在ではほとんどの金融機関で設置、活用されています。金融機関以外(幼稚園・保育園・学校・障害者支援施設・高齢者施設、病院・クリニック、高速道路料金所、鉄道駅、道の駅・浜の駅、バス会社、市区役所等の官公署、電気・ガス・水道等のライフライン施設、博物館・美術館、図書館、ホテル、貴金属・宝飾店・質店、大型商業施設等)への導入も増えています。

特に平成28年(2016年)7月に発生した神奈川県相模原市の障害者支援施設における殺人等事件を契機に、防犯対策の重要性とその手段としての110番非常通報装置の有効性が改めて認識されるようになりました。これを機に、当協会では障害者支援施設のみならず、高齢者施設、女性・少年保護施設及び保育所・学校等の社会的弱者関連施設における110番非常通報装置の普及を積極的に推進しており、事件以降、これら施設の新設累計は、約2,500台(令和6年12月末現在)となっています。

令和6年12月末現在、当協会が支援している施設の110番非常通報装置の設置台数は約32,600台です。うち、金融機関以外の施設の設置数は約6,650台で、全体の約20%になります。

活用事例

事業所(施設)の110番非常通報装置が効果的に活用され、被害の拡大を防ぎ、犯人も早期に検挙された事例等を紹介します。

(金融機関)

●強盗事件活用例

事例1(群馬県:郵便局)

 令和6年1月15日(月)午後1時50分ころ、群馬県内の郵便局に犯人(55歳の男)が侵入し、カウンター越しに女性局員と男性局員に対して、刃物2本と爆発物のようなものを見せ、「30万円出せ」などと脅し、現金30万円を奪い、車で逃走した。局員が直ちに110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が約10分後に市内の路上で犯人を発見し、強盗罪で緊急逮捕した。

事例2(東京都:銀行)

 令和6年3月12日(火)午後0時40分ころ、東京都内の銀行に犯人(57歳の男)が侵入し、ロビーにいた案内係の男性行員の背後から拳銃のようなものを突きつけ「金を出せ。5億円出せ」と脅した。この様子を見ていた女性行員がとっさに強盗を直観し、インカム(無線機)で合言葉を使って全行員に知らせ、110番通報ボタンを押下した。知らせを受けて男性課長が犯人に対応していたところ、非常通報で急行した警察官が犯人を銀行内において強盗未遂罪で現行犯逮捕した。

事例3(岡山県:銀行)

 令和6年9月24日(火)午前9時25分ころ、岡山県内の銀行に犯人(80歳の男)が侵入し、カウンター越しに女性局員に拳銃のようなものを突きつけて「金出せ」と脅した。複数の行員が直ちに110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が犯人を行内において強盗未遂罪で現行犯逮捕した。

●その他の事件等活用例

事例1(大分県:信用金庫)

 2月9日(金)午後2時50分ころ、大分県内の信用金庫において、行為者(71歳の男)は、窓口の女性職員に意味不明のことを口走り、支店長との面会を要求した。支店長がロビーで対応すると、再び意味不明なことを口走り、大声を上げながら事務室に侵入したことから、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し、行為者を保護した。

事例2(福岡県:郵便局)

 8月2日(金)午後3時30分ころ、福岡県内の郵便局において、犯人(男)は、ATMでの入金を試みたが、うち1枚が入金できなかったため窓口で局員に対し「やり直して欲しい」と依頼したが、やり直しはできない旨の説明を受けたところ、激高し大声を出しながらカウンターを叩きだしたことから、危険を感じた局員が110番通報ボタンを押下した。その後、犯人が再びATMコーナーに向かったので、局長が説明のため犯人に近づいたところ、両手で局長の肩を3回押した。非常通報で急行した警察が犯人を暴行罪で任意捜査処理とした。

事例3(愛知県:銀行)

 12月6日(金)午前11時50分ころ、愛知県内の銀行において、酒に酔った犯人(50歳代の男)は、何も持参せず来店し、現金を引き出したいと窓口に申し出たため、男性行員が通帳の再発行を促したところ、犯人が激昂し、両手で男性行員の首を絞め始めたことから、危険を感じた副支店長が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し、警察署に同行したうえで暴行罪で任意捜査処理とした。

(金融機関以外)

事例1(福岡県:保育園)

 令和6年3月4日(月)午後5時50分ころ、福岡県内の保育園において、他の保護者とトラブルを起こすなどしたことから園長から送迎を控えるように要請されていた園児の父親(40歳代の男)がいきなり現れ、大声を出し、迎えに来ていた妻とけんかになった。危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下し、警察官が急行したが、実害はなく、行為者も落ち着きを取り戻したことから説諭処分とした。

事例2(愛知県:病院)

 令和6年4月24日(水)午後10時40分ころ、愛知県内の病院において、救急搬送された犯人(20歳代の男)は、急に暴れ出し医師の顔を殴るなどしたことから、危険を感じた看護師が110番通報ボタンを押下した。非常通報で急行した警察官が犯人を暴行罪で現行犯逮捕した。

事例3(兵庫県:官公署)

 令和6年5月20日(月)午後3時30分ころ、兵庫県内の市役所において、犯人(54歳の男)が諸手続のために来所したが、なかなか呼び出されないことに憤慨し、大声で騒ぎ出した。職員2人で対応していたところ、さらに激昂した行為者が両手で男性職員の胸付近を突いたことから、同職員から依頼された他の職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で急行した警察官が犯人を公務執行妨害罪で緊急逮捕した。

事例4(栃木県:社会福祉施設)

 令和6年8月2日(金)午後10時40分ころ、栃木県内の社会福祉施設において、行為者(男)は、仲間の男3人で同施設を訪れ、「知人の女性に会わせろ。ここにいることは分かっている」などとインターホン越しに当直の職員に面会要求を繰り返した。職員が不在を理由に断っても行為者らが退去しないことから、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察が急行したが、行為者らは既に立ち去っていた。翌日の夜間にも不審者によるインターホンを押す事案があり、警察官がパトロールを実施し警戒した。

事例5(山形県:駅)

 令和6年8月18日(日)午後3時15分ころ、山形県内の駅構内において、犯人(37歳の女)が駅の待合室で包丁を持っているところを見つけた利用客が駅員に連絡、危険を感じた駅員が110番通報ボタンを押下した。他の駅員らは、刺股を持って駆けつけ、待合室の利用客を避難させながら犯人を落ち着かせるよう説得していたところ、非常通報で急行した警察官が犯人を銃刀法違反で現行犯逮捕した。

事例6(愛媛県:高速道路料金所)

 令和7年3月10日(月)午前1時15分ころ、愛媛県内の高速道路料金所において、ETCの不具合で駐車中の車の助手席にいた泥酔した行為者(60歳代の男)は、係員が到着すると「遅いじゃん」等と怒号を挙げて近づき拳を振り上げ殴る素振りをしたことから、身の危険を感じた係員が事務所に連絡し、事務所の係員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行したが、実害もなかったことから厳重注意の上、説諭処分とした。

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