導入実績と活用事例

110番非常通報装置は金融機関を中心に導入が進められ、現在ではほとんどの金融機関で設置・活用されています。金融機関以外(幼稚園・保育所・学校、障害者支援施設・高齢者施設、病院、高速道路料金所、鉄道駅、バス会社、市区役所等の官公署、電気・ガス・水道等のライフライン施設、博物館・美術館、ホテル等)への導入も増えています。

特に平成28年(2016年)7月に発生した神奈川県相模原市の障害者支援施設における殺人等事件を契機に、防犯対策の重要性とその手段としての110番非常通報装置の有効性が改めて認識されるようになりました。これを機に、当協会では障害者支援施設のみならず、高齢者施設、女性・少年保護施設及び保育所・学校等の社会的弱者関連施設における110番非常通報装置の普及を積極的に推進しており、事件以降、これら施設の新規の設置数は2,100台を超えています。

令和4年12月末現在、当協会が支援している施設の110番非常通報装置の設置台数は約33,400台です。うち、金融機関以外の施設の設置数は約6,340台で、全体の約19%になります。

活用事例

事業所(施設)の110番非常通報装置が効果的に活用され、被害の拡大を防ぎ、犯人も早期に検挙された事例等を紹介します。

(金融機関)

事例1

 令和4年1月4日(火)午前11時0分ころ、北海道下のH銀行T支店に犯人(37歳・自称建築業の男)が黒色マスクをして店内に侵入、カウンター越しに女性行員に対し「1千万出せ、刃物を持っている」と書いた紙を渡し脅した。女性行員は直ちに110番通報ボタンを押下し、近くにいた他の女性行員も不審な状況に気づき、合い言葉でフロアにいた全員に知らせ、非常通報で急行した警察官が犯人を行内で現行犯逮捕した。尚、犯人は、懐に包丁を隠し持っていた。

事例2

 令和4年3月3日(木)午前11時33分ころ、富山県下のG銀行H支店に行為者(60歳の男)が父親を伴い入店、行員から番号札を取って順番を待つように案内されたところ、行為者が「早くしろ。俺は堅気じゃない」などと意味不明なことを大声で発したことから、危険を感じた行員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し、行為者を保護した。

事例3

 令和4年6月30日(木)午後1時40分ころ、静岡県下のQ信用金庫R支店において、ATMを操作していた犯人(67歳・無職の男)が「入金されていない」と騒いだため、女子職員がフロアのソファに案内し、男性職員とともに説明していたところ、突然、犯人が女子職員の首付近を殴りつけ、軽傷を負わせた。それを見ていた職員が直ちに110番通報ボタンを押下した。非常通報で急行した警察官が犯人を暴行罪で現行犯逮捕した。

事例4

 令和4年11月1日(火)午前9時55分ころ、宮城県下のS銀行本店に犯人(69歳・パート従業員の男)が茶色のキャップ帽をかぶりマスクをして来店、窓口で女子行員に声をかけ、男性行員も加わって対応すると、「2500万円出せ、爆弾を持っている」脅し、ボストンバッグから銀色のデジタル時計を取り出し、爆弾であるかのように装った。合い言葉で事態を察知した別の行員が直ちに110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官が犯人を行内で強盗未遂罪で現行犯逮捕した。

事例5

 令和5年3月16日(木)午後3時ころ、兵庫県下、T銀行N支店に犯人(37歳・トレーダーの男)が、行内に侵入すると、窓口の職員に金を要求し、断られたため7カウンター横の扉から事務室内に入り、行員に大声で「金を出せ」と脅し、対応した支店長の顔面を殴りつけたが、他の行員に制止されると何も取らず歩いて逃走した。行員が犯人を追跡し、遠巻きで犯人の動向をうかがっていたところ、非常通報で急行した警察官が発生から約15分後に約45m先の路上で犯人を強盗未遂罪で現行犯逮捕した。なお、行員は、強盗湯犯人と認めると直ちに110番通報ボタンを押下していた。

(金融機関以外)

事例1

 令和4年1月4日(火)午後3時40分ころ、兵庫県下のA市役所生活援護課において、障害年金の申請に訪れた犯人(53歳・無職の女)が職員の対応に激昂し、感染防止用のアクリル板を数回殴り破損させたことから、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で急行した警察官が犯人を器物損壊罪で現行犯逮捕した。

事例2

 令和4年3月12日(土)午後2時12分ころ、滋賀県下の特別養護老人ホームHにおいて、行為者(72歳の男)が来所し、施設入所中の者の情報提供を求めてきたが、対応した女性職員が個人情報の理由から「そのような方はいない」と答えたところ、行為者は突然激昂し、スリッパを投げながら暴言を吐いてきたため、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行したが、実害はなく行為者の落ち着きを取り戻したことから説諭処分とした。

事例3

 令和4年4月29日(金)午前0時36分ころ、東京都下のJR東日本O駅において、駅止まりの車両内で酔っ払って寝ていた犯人(47歳の男)が点検に訪れた駅員に起こされたため、いきなり駅員を押しつけ、さらに腹部を蹴ったことから、駅員が無線機で改札窓口の駅員に警察に通報するよう依頼するとともに、他の駅員と共に犯人を確保した(暴行罪で現行犯逮捕)。通報の依頼を受けた改札窓口の駅員は、直ちに110番通報ボタンを押下し、非常通報で急行した警察官に犯人を引き継いだ。

事例4

 令和4年5月5日(木)午後9時27分ころ、和歌山県下のP病院救急治療室において、泥酔状態で緊急搬送され治療を受けていた犯人(51歳・職業不詳の男)が治療中に暴れ出し医療器具を持とうとしたことから看護師が制止しようとしたところ、犯人が左手で看護師のこめかみを殴打した。職員が電話で管轄警察署に通報し、さらに110番通報ボタンを押下した。通報で急行した警察官が犯人を傷害罪で現行犯逮捕した。

事例5

 令和4年9月22日(木)午後4時5分ころ、福岡県下のY保育園において、行為者(40歳代の女)が奇声を発し敷地内駐車場やその周辺で、園児や園児を迎えに来ていた保護者に声をかけるなどしていたため、危険を感じた職員が110番通報ボタンを押下した。非常通報で警察官が急行し、行為者に厳重注意するとともに自宅に送り届け説諭処分とした。

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